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アスペルガーのお仕事あるある~前編~

今回は、最近よく聞くアスペルガーの方について、またお仕事で起こるあるあるについて、就労移行支援のスタッフにインタビューしました。

 インタビューに答えてくれたのは、ワンモアの統括所長である芳賀大輔さんです。芳賀さんは、15年間、病院デイケアでの就労支援を経て、2015年に就労移行支援事業所ワンモアを設立されました。これまでの経験から、アスペルガーについてや、障害を持って働くこと、働くための準備についてお話ししていただきました。

【今回の内容】

 ✔アスペルガーとは何か?

 ✔仕事や日常生活で起こるあるある①過敏さと鈍感さ

 ✔仕事や日常生活で起こるあるある②想像することが苦手

 ✔仕事や日常生活で起こるあるある③環境の変化が苦手

以下 芳賀⇨芳、インタビュワー(ワンモアスタッフ)⇨イ

アスペルガーとは何か?

イ:芳賀さん、最近「アスペルガー」っていう言葉よく聞きますが一体どういったものでしょうか?

芳:アスペルガーとは発達障害の1つで、昔の診断名「アスペルガー症候群」の略称です。「アスペ」とか言われることもありますよね。現在は自閉スペクトラム症(ASD)という診断名になっています。ASDの特徴としては、表情や視線、身振り手振りから相手の気持ちを読み取ったり、自分の考えを伝えたりすることが苦手であるということです。他にも、こだわりが強いといった特徴があります。仕事上でも苦労する方は少なくないと思います。

イ:アスペルガーって昔の呼び名だったんですね。発達障害って今いろいろあると思うんですけど、アスペルガーと他の発達障害の違いってなんですか?

芳:1番特徴的なのは相手の気持ちを推し量ることが苦手だというところではないでしょうか。そういったところから対人的なトラブルも起きやすいですよね。アスペルガーと重複している場合を除いては、ADHDとか、学習障害では、あまり見られない症状ですよね。

イ:どうして相手の気持ちが読み取れないんでしょう?

芳:脳の働きが違うことが原因の一つのようですね。もちろん僕たちは相手の気持ちを想像しているっていうのがありますよね。相手の気持ちって目に見えないし、わからないんですが、仕草とか視線とか口調とかその文脈とか、いろいろ総合的に考えて、相手の気持ちや考えている事を想像しています。でもアスペルガーの人たちにとってはそれらを総合的に考えるっていうことが、苦手な場合もあります。言葉の裏を読むとか、皮肉とか、そういうことがわからないので文字通り受け取ったり、直接的な表現をしてしまうってところが問題なんだと思います。例えば、顔が広いという言葉を聞いて、意味を知らずに「顔が大きい」ということだと思ったり、部屋が汚いことに対して嫌味で「きれい好きですね」と言われてそのまま褒められたと思ってうれしくなったりということがあったりしますね。

イ:なるほど、言葉をそのまま受け取ってしまうんですね。先ほどおっしゃっていましたが、アスペルガーとADHDや学習障害は重複することもあるんですか?

芳:そうですね。障害が複雑になってるって言うのもあると思います。いろいろ研究が進んで、症状の種類や、関係性がわかってきました。それに加えて、発達障害が一般的に知られるようになってきたことが大きいと思います。発達障害の概念や情報がより身近になって、ご自身でも気づけるようになってきたことから、障害の有無を調べる人が増えてきました。その結果、診断がついたり、重複していることが明らかになってきたんだと思います。それに、障害の程度もばらばらだし、IQも様々、個人の中の得意と苦手の差が極端に大きいっていうこともあります。個人差が非常に大きいので、アスペルガーとかADHDといった病名だけでその人を表現するのは難しいかなと思います。

 なので個別で自分の特徴を知っておくっていうことが、すごく大事ですよね。特に私たちのような支援者はその辺の”人それぞれの違い”っていうの理解しておくっていうことが、本人にあった支援をする上で大事かなと思います。

仕事や日常生活で起こるあるある①過敏さと鈍感さ

イ:なるほど、いろいろわかってきましたけど、やっぱり個人差が大きいという事ですね。人にもよると思うんですけど、その中でもよく聞くトラブルとか仕事上でよく起こる失敗みたいなことって、どんなものがありますか?

 

芳:先ほども少し言ったように、人間関係やコミュニケーションでトラブルが起きやすいですよね。「太ってますね」とか直接的な表現をしてしまったり、「どれぐらいお給料もらってますか?」と唐突にちょっと聞き辛いことを質問したりすることによって、相手が嫌な思いをするということがあったりしますね。

 他には発達障害全般かもしれないですけど、 道具を使うことが苦手な方も多いように思います。道具っていうのは、学校で言ったら掃除道具を使うこととか、球技とかですね。協応運動というのですが、左右の手で違うことをすることが難しいですよね。お仕事でも、例えば清掃だと箒とちりとりとか掃除機を使いますし、作業系の仕事でも道具を使っての組み立てなんかもそうですよね。全員が苦手ってわけではないのですが、難しいとよく聞くように思います。これも個人差があるんですけど、感覚の過敏さと鈍感さっていうのも特徴としてはあるますかね。

イ:この音が苦手とか、服のタグが苦手とかを聞いたりもするんですけど、それはこの辺の鈍感さ敏感さが入ってくるんですか?

芳:タグもおそらく、過敏な部分かなと思います。でも誰でもちっちゃい子供の時はすごいこだわったり、気になったりとかもありますよね。やっぱり、連続性の中でそれが生活にどれぐらい影響があるかってことが重要なのかなって思います。

 とある事業所では、お寿司屋握る作業をしているんですが、過敏さをうまく使って一定の重さでシャリを握れることを売りにしていたりしますね。その繊細な感覚が活きてくるみたいなところがあったりします。

 他にも音に対して過敏さ繊細さがある人の中には絶対音感がある場合もあります。プロの音楽家の方でも、障害をオープンにしている人も増えてきましたよね。そういう人は、半音上がってるとか、下がってるとか、歌い出しで20回30回録り直すとか。そういったこだわりがいい作品を生み出しているんだと思います。職人って呼ばれる人たちの中にも、繊細さと過敏さがすごく近いところにある人がいるかもしれないですね。

イ:私も「これがいい!」みたいな、こだわりがあるんですけど、もしかして発達障害かなって思ったりするのですが、発達障害と発達障害じゃない、その境目ってどんなとこなんでしょうか?

芳:日本人全員発達障害って言われるぐらいですからね。大なり小なり特徴はみんな持っているんじゃないでしょうか。発達障害の本を読むと「自分も発達障害かも」って思うし、うつ病の本を読むと、「自分もうつじゃないかな」って思ったりするし。やっぱり苦手な部分によって日常生活が送れなくなっているとか、お仕事でもトラブルが絶えないとかになってくると、もう少しちゃんと調べてもらうほうがいいかもしれないですね。一方で、病院に行けば障害の診断がつく人でも、問題なくお仕事をされてる方は一定数いるって言うふうに考えた方がいいのかなと思います。

仕事や日常生活で起こるあるある②想像することが苦手

イ:確かに、仕事に影響ないなら気にする必要もないかもしれないですね。

 アスペルガーの方を支援してて、見通しが立たないというか、計画を立てるのが苦手な方が多いなって思うことがあります。例えば、仕事が何個かあったら、どれからやったら良いか分からなくなるとか。そういったこともよくありますか?

芳:そうですね。見通しが立たないから、焦って就職活動を進めてしまったり、目の前にある課題だけをこなして、大事な仕事が後回しになって怒られたりとか、よく聞く例ですね。今やっていることが今後どうなるかということを想像することが難しいのだと思います。やはりここでも出てくるのは、想像することの苦手さですよね。

 「これ、あれ、それ」言葉というような指示語も、同様です。「あれしといて」、「あそこにあるから」とか、それがやっぱり理解できない、想像できない。しかも質問することも苦手な人が多いので、この合わせ技で仕事がうまくできなかったって言う人がいますね。質問するのも、相手の手が空いているタイミングをなんとなく理解する必要があるし、自分の考えていることを相手にわかりやすくまとめないといけないので、アスペルガーの人にとっては非常に難しいと思います。

イ:「奥にあるから」とか、「適当にやっておいて」とか言いがちですが、それって難しいですよね。

芳:そうですよね。あとは曖昧なことに対する耐性が低いというのも、混乱を引き起こす原因の一つかもしれないですね。まぁ他の疾患でも、早く結論を決めてしまいたいといったこともありますが。結論を決めた後に、考えを変えるっていうことも苦手かなと思います。決めてしまったらほかの物事が受け入れられないので、楽しめる幅が減っちゃうことあるのかなと思いますね。

 人にもよるのですが、一例でご飯も「これ」と決めたら同じものばっかりを食べることもあるみたいですね。短期的にはいいかもしれないけど、長期的に考えると、栄養バランスの問題になってきたりするのかなと。

イ:コミュニケーションや生活面でもこだわりや特徴が出てくるんですね。

 一方でコミュニケーションに苦手意識があるから、「こんなこと言ったら変かな」みたいな感覚が強くなりすぎて 、雑談が楽しめないっていう方もいますよね。「もっと雑談したほうがいいんだろうか」とか「ずっと黙ってても変だし、急にしゃべってもおかしいし」とか。正解はないと思うんですけど、正解を求めてしまうように感じます。

芳:聞き流すというか、興味あるときはいって、興味ないときは離れてっていうのが、苦手ですよね。それも「適当にやる」というのが難しいところと繋がってますよね。

 あとは、ルールをすごく遵守するって言うところがありますね。電車の割り込みとか、私なら「嫌なものを見たなぁ」って思って流したりするけど、注意しに行ったりとか、そうすることでトラブルになって、自分の体調が悪くなる。ルールに対する意識が強くて、それに対するこだわりというか、まぁ真面目すぎる部分が、自分を苦しめることがありますね。雑談はルールがないから、どうすれば良いのかわからなくなってしまうのかもしれないですね。

 逆に、こんなやり方もあるんだなと思ったのは、学生時代とか女性がグループで動くってことがよくあると思いますが、そのグループの動く通りに行動することで、何とか乗り越えるっていうようなやり方をしてた人もいます。大人になって、自分の意見を言わないといけなくなると苦労したんですが 、学生時代は、みんながご飯行きたいってなったらそれについていく、なんとなくみんながトイレ行くからついて行くとか、そういうことで、そのグループにいるってことで、何とかやっていくというやり方をされていた方がいました。それも1つの方法なのかなと思いました。

イ:確かについていくことが正解だったのかもしれないですね。

 学生だと許されたことも、社会人になるとそうもいかないってことも多いですね。服装もその一つだと思います。アスペルガーの方の中には、「オフィスカジュアルで来てください」とか、その場に合った服装をするとかっていうのがちょっと苦手だったりしますよね。ちょっとこだわりもあるから、この色は嫌だとか、こういう形の靴じゃないと履きづらいとかっていうのがあると、どんどん何着ていいか分からなくなって。

 イ:他に何か起こった例があれば教えていただけますか?

芳:他者からどう見られているかって言う視点の理解が難しい人にとっては、服を選ぶ基準が”寒い”とか”暑い”とか、着心地がいいってことになるので、他の人から見るとちょっと不思議な色合いの重ね着をしてみたりとか、 着る順番がおかしな重ね着になったりしていることがありますね。ワイシャツの下にセーターを着ていたりとか。服装だけじゃなくて、寝癖とか髭とかメイクとか。相手からどう見られるかっていうのは社会人にとって、ある程度大事なんですが、どうしても自分基準になるとうまくいかないですね。そういうこともやっぱり練習が必要なのかなって思いますね。靴とかも、はける靴のこだわりがありますよね。もしかしたら男の人だったら、ネクタイとか、首周り締め付けが苦手だったり、逆にタートルネックみたいに首が守られてないとダメだったりとか。ベルトとかズボンの締め付けが苦手っていう人もいたりもしますよね。

仕事や日常生活で起こるあるある③環境の変化が苦手

イ:環境の変化はやっぱり弱いですよね。自分の業務量は変わってないけど、席替えがあって隣にいる人が変わるだけで集中度が変わってきたり、周りが忙しそうにしていることだけで、それに気を取られてしまうのもあるし。 聞いたことあるのが、人事異動とかの通知が直前すぎて自分が異動するわけじゃないのに環境が変わるって言うことが不安で体調崩したというお話です。そういったあたりはどうでしょうか?

芳:そうですね。ありますね。以前担当している方から連絡あって、人事異動の後から調子が悪いって言うので、会社訪問に行ったんですけど「みんなバタバタしてるんです」って言うんですね。「新しい人が来て(その人は)仕事覚えなきゃいけないし、あれもしなきゃいけないし、これをしなきゃいけないし」って言う。私が「ああじゃあ仕事増えたんですか?」って聞くと、「私の仕事は変わってない」って言うんですよ。でも周りがバタバタしてるから自分がすごくしんどくて、調子が悪い、眠れないって言うんですよね。だからやっぱり、自分自身の変化だけじゃなくて、環境の変化に適応するのに時間がかかるんですよね。

 環境の変化で、日々のルーチンが変わるっていう所も、ちょっとあるのかなって思います。働く中で、挨拶をするとか相談するって言う事だけじゃなくて、周りを見て仕事をすることができるようになっていきます。でも、周りのことをよく見ることができるようになったことで、周囲がバタバタしてるってことに対して、ルーチンが変わるとか、自分の処理能力を越えるんじゃないかなって、不安が出てきてしんどくなるところはあるのかな。

イ:ルーチンの変化が関係してるんですね。なるほど。

芳:働く中でいろいろなことを学んで、スムーズに働くことができるようになることもありますよ。でも一人でやっていくのは難しいので、働いてからも支援は必要かなって思います。うまくいくようになってからも、職場の人に「すごく助かったよ。今日はありがとう。」って言われると、「明日は今日以上に頑張らないと」、「明日はそれよりももっと頑張らないと」ってプレッシャーを感じて、しんどくなっちゃうこともあったりして。何か困った時に職場で相談すること、うまく相談できそうになかったら、支援者に相談してみることで、職業生活が安定して続いていくんだと思います。

次回は…

今回は、アスペルガーの方の特徴と職場で起こるあるあるについて、いろいろな具体例を交えてお話しいただきました。自己理解を深めること、特性を活かすこと、練習することが働く上で役立つことがわかりました。また適切なサポートを受けることも重要ですね。

 次回は、【働くための準備と必要なサポート】についてお話ししていただきます。

 

丸

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