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アスペルガーさんの働く準備とサポート~あるある後編~

今回は、最近よく聞くアスペルガーの方が働くための準備や必要なサポートについて、就労移行支援のスタッフにインタビューしました。

インタビューに答えてくれたのは、ワンモアの統括所長である芳賀大輔さんです。芳賀さんは、病院デイケアでの15年間の就労支援をされていました。その後2015年に就労移行支援事業所ワンモアを設立されました。これまでの経験から、働くための準備や必要なサポートについてお話ししていただきました。

✔職場でスムーズに働くために必要なことは?

✔自分の特徴や障害を理解するためには?

✔就職後に必要なサポートって?

以下 芳賀⇨芳、インタビュワー(ワンモアスタッフ)⇨イ

職場でスムーズに働くために必要なことは?

イ:前回はアスペルガーの特徴やお仕事でのあるあるについてお聞きしました。その中で、個人差が大きいことや、自己理解が重要であるというお話がありました。

 アスペルガーに限らないかもしれないんですが、やっぱり人によって作業スピードが出る出な、数字に強い弱いとか、個人差がとっても大きいなと思うんですけど、そういうのって練習すれば治るものなんですか?

芳:治る治らないで言うと、治りませんね。付き合っていくっていうことが必要なのかなと思います。身近な人や職場の方に配慮してもらって、特徴を理解してもらって、うまく仕事ができる、人間関係でトラブルが起きないっていう方が重要なのかなと思います。そういう意味では、障がい者雇用という形で働くことはいいのかもしれないですね。

イ:配慮として理解してもらうって言うことですか?

芳:そうですね。周りにも理解してもらうことが良いと思います。自分自身で特徴をよく理解しておくことが大前提ですが、両方の要素がないとうまくいかないんじゃないかなと思います。

イ:そうですよね。自分がわかってないのに何を配慮してもらえばいいのかって言う風にもなりますしね。

 障害者雇用での就職先の方の話を聞くと、「どこまでやってあげていいのかわからない」と聞いたりします。「甘えなのか、ほんとにできないのか分かりません」とか、 「それは家庭での問題だよね」とか。私が担当している方の職場からも「相談をどこまで聞いたらいいんでしょうか」と質問されたことがあります。配慮してもらうに際して、仕事の問題か、家庭の問題か、自分でも整理しておくことや、障害としてできないのか、どうかって言うのを分けておくことが必要なんですかね。

芳:そうですね。会社も同僚も万能じゃないので、どんな問題でも理解してくれる、なんとかしてくれるってことは無理がありますよね。

 やっぱり仕事に関する相談や、それに付随するものはもちろん会社の中で何とか解決してもらえたらと思うんですが、生活上の問題とか医療・福祉の事とかになってくると、もう少し専門的なサポートとかあるほうがいいのかなと思います。相談相手も職場で”この人”って決まると、その1人なんでも言うようになってしまうのですが、少し交通整理的な事はあった方がいいですね。家庭のことや、医療的なことは私たちのような支援者に、業務内容や勤務に関することは職場の担当者に、というように誰に何を話すのか整理をしてあげてた方がいいですね。特に働いてすぐのときの支援として大切なことだと思います。他にも、特に困っていない状況でも定期面談の頻度を決めておいた方が、本人もしんどくなって困ってから「誰に話したらいいのか」って考えなくて済むんじゃないかなと思います。

イ:そういう意味ではワンモアみたいに支援する人、仕事以外の事、仕事のことも含めて聞いてくれる人がいるっていうのは大事ですね。

芳:そうですね。客観的に、職場と本人の間に立って話を聞けば、交通整理だったり、時には通訳みたいな感じで、うまく言葉にならない部分を会社の人に伝えたりすることができますね。逆に会社の人が困っていることをご本人にわかりやすい表現でお伝えするみたいな事もありますね。

自分の特徴や障害を理解するためには?

イ:就職する前に自分のことを理解できていて、ある程度自分で職場にも説明できるとスムーズに働くことができると思うのですが、その前段階では、どんなことが必要でしょうか?自分の得意苦手がわからなかったりとか、そもそも自分は発達障害なんだろうか、どうかって思ってる方はまずはどうしたらいいですか。

芳:まずは発達センターとか地域の相談を受けてくれる施設で、ご相談をしてみてはどうでしょう?市町村によって施設名とかは違ったりするので、”発達障害 相談 〇〇市”とインターネットで検索すると出て来ると思います。他にも、病院で発達検査をしてもらうというのもあると思います。

 お仕事をしたいっていうことだと、 ワンモアのような就労移行支援事業所でアセスメントをしてくれる所もいいと思います。ワンモアに通っている中で特徴がわかってきて、病院に相談することも少なくないですね。でも検査をして診断がついても、自分を理解したことにはなりません。

イ:診断がついてもまだ自己理解にはならないんですね。検査結果を日常生活に落とし込まないといけないんですね。

芳:そうです。そこで、就労移行支援事業所に通所して、自己理解を深めていくことが大切になってきます。

 支援者側も、あなた苦手なことありますよねとか、これできませんよねとかって言うことを直接的に言うのではなく、相手が苦労をしてきたんだなって言うことをちゃんと想像するというか、理解した上で、支援していく姿勢が大切ですよね。じゃあ一緒にどうやって行きましょうかって言うふうになれるかどうかっていうことが大事なんじゃないかなと思います。最近だとチェックリストでチェックつけて「発達障害ですね、ここ苦手ですね」みたいな話をする所もよく見るんですが、その障害に対して、本人がどれくらい受け入れられているのか、それに対してエネルギーを持って立ち向かっていけるかって言うところをちゃんとアセスメントして、理解していくこと。理解したいなと思いながらやっていくことがいい支援だと思います。そういう場所につながると、安心して自己理解を深めることができると思うんです。

 ワンモアの中では、検査やチェックもあるんですが、体験って言う形を通していろんなことを経験して気づくっていうことを大事にしています。それはパソコンをするとか、スキル面も大事ですが、対人関係の体験みたいなことも訓練の中でしていくことで理解が深まると思います。 仕事上で使う報告・連絡・相談も実際にやってみることが大事ですよね。ビジネスマナーしますとか、認知行動療法してますって言うだけだと、知識としては増えるかもしれないけどそれをどう日常生活の中でどう活かすか、実際にやってみてうまくいったか、もしくは苦労したかっていうのは、やってみないとかわかんないと思うんですよね。体験っていうのはすごく大事なんです。

 気づくっていうのはコミュニケーションだけじゃなくて、運動するって言うことで気づくこともあるだろうし、パソコンで脳トレをしたりすることによって自分の得意になっていることをわかるって言うこともあるので、いろんなプログラムに取り組む、いろんな体験するというのは有効ですよね。ヨガとか、脳トレゲームとかは、一見仕事と関係ないけど、単に仕事の遠回りをしているのではなくて、得意苦手をできるだけ自分で知っておくことにつながると思います。

イ:ワンモアの所内の実習ではアピアランスチェックって言って、寝癖ついてないですか、シャツが出てないですかとかね、そういうチェックをしますよね。やってみて、他の人に見てもらわないとわからないこともあったりしますね。職場での身だしなみって、頭でわかってても、これぐらいでいいだろうと手を抜いてしまうこともあるし。

 男の人はネクタイの結び方、女の人は最低限のお化粧、これって普段しない人にとっては難しいことだなって思います。そういうことも体験するというか、練習を重ねておくみたいな事は大事かもしれないですね。

芳:そうですね。着慣れとくとか、やり慣れておくって結構大事なことですよね。障害だけじゃなくても、新入社員さんって、毎日スーツを着るとか身だしなみが、安定してできる人もいれば、髪がちょっとボサボサだったり、時間なかったのか、なんかぎこちないなっていう人もいますよね。特に今はコロナが長くなったのでもう外に出るとか、社会と接点を持つとか、そういうことが制限されてきたこともあって、いろんな経験が少ないっていうのも影響あるのかなと思ってます。身だしなみも月に1回ぐらいスーツ着てみるとか、お化粧してみるとかしておかないと、いざ面接って時に、困ったりしますよね。太ったり痩せたりして、スーツのサイズが合ってないとか、靴が足に合わなくて歩いてられないとかね。そういう練習で個人的にやっても、見てくれる人がいないとなんだが張り合いがないですよね。だから、就労移行でやってみて、スタッフに見て持っておくのがいいと思います。

イ:確かに、スーツって長く着ていないと、窮屈ですしね。たまに来ておくほうが安心して就活できそうです。実際にやってみる、体験するってすごく大事ですね。

芳:実際にやってみるって結構僕らでも難しかったりするからね。自分一人でやるんじゃなくて、スタッフも一緒にやってもらうことが大事かなと思います。支援者が一緒に取り組むことで、職場で対人面で起こりうることを想像できると思います。働き始めてから、自信を失うような大きな失敗はして欲しくないなぁと思うんで、「もう働くの嫌だなぁ」って思うのが1番なって欲しくないのでね。先に一緒に色々経験しておく、そこでわかった得意と苦手をスタッフと一緒に整理することが自分を理解するためには役に立ちます。自分が感じたことと、客観的に見たことを擦り合わせていくことが正しい理解になりますよね。体験する中で、ちょっと失敗するかもしれないけど、そこで気づけるチャンスがあるし、失敗はあるかもしれないけど、それを糧にするっていうのが、今後の暮らしで活きてくる。 何も失敗しないようにお手伝いしますって言う事はやっぱり難しいです。でも、もう働けなくなるような、大きな失敗は絶対させないようにっていう気持ちで、いろんな体験をしてもらっていますね。一人でやるのは怖かったり、緊張したりもするので、やっぱり誰かに見守ってもらう、一緒にやってもうほうがいいと思います。

 やっぱり大事な事は、アセスメントなんだろうなと思います。できないことを何回も練習するっていうのは、訓練とかトレーニングじゃない。これだったらできるんじゃないかとか、これやっぱりできないから環境を設定しようとか、支援者側が、限界をわかって共有していくってことがとっても大事なじゃないかなと思うんです。これを間違うと、ただただできないことを何回もひたすらやることになる。これは支援でもないし、トレーニングでもないなと思っています。

イ:就労移行の中で失敗しておいて、実際働きだしたときにうまくやれるようになるっていうのは大事だと思いますね。私も含め、ワンモアのスタッフは全員資格を持っている専門家ですが、外から見てるだけではわからないこともあるなって思います。本人がやってみないとわからない。側から見て「でききてるな」って思っても、本人は「いっぱいいっぱいでした」とか、「もうしんどいからやりたくないです」みたいなこともたくさんありますよね。 やっぱり専門家の話をただ聞くだけじゃなくて、自分でやってみて、「こう感じたよ」って支援者と共有して、仕事選びとか、難しいこに対する工夫を探していくっていうのが大事なのかなと思います。

就職後に必要なサポートって?

イ:就職してから、「実はそんなこともできたのか」、「時間をかけたらこんな難しいことができるようになったね」とか、そういう嬉しい発見もたくさんあるんですけど、思いがけない難しさにぶつかることもあると思うんですね。実際、働きだしてからぶつかることも多いと思うので、せめてもワンモアみたいなところに一度通って、練習してみるものいいかなと思いました。就職しても相談する先がある状態を作っておくことがいいんじゃないかなと思いますよね。

芳:やっぱりね、働いてから気づくことがあるので、定着支援が大事になります。職場で困ったことがあった時に、適切に、必要に応じて対応してくれる支援があるのはとても大事なことないんじゃないかなと思います。

 今週は問題なく働けましたとか、気持ち的にちょっと疲れましたとか、そういうことを気軽に話せて、アドバイスをもらえると安心して働けますよね。新卒採用とかで就職すると、同期がいて、気軽に話せたり相談したりできるかもしれないけど、障害者雇用は1人だけの採用がほとんどなので、そういう仲間ができづらいです。大したことじゃないけど、ちょっと仕事のことを話せたり、自分の気持ちを言えたりする場所はあったほうがいいですよね。もちろん、働く中で職場の人と仲良くなるというのはあると思うのですが、初めのうちはなかなかね。

イ:確かにそうですね。今週はこうでしたとか、ちょっと困ったけどなんとか出来ましたとか、話せる相手も入りますね。職場で困ったことがあっても、相談できる人がいると思うと気持ちが楽になりますね。

芳:上司に話をするって、どんな人でもちょっと緊張したりしますよね。仕事の相談も「こんなこと言ったらどう思われるんだ」と思うと声をかけづらかったりします。何を報告して、何を言わなくていいのかという判断が難しい方もいるので、支援者に話す中で、「それは上司に報告しましょう」とアドバイスをもらって整理がついていくことも少なくないですね。そもそもいつ声をかけていいのかわからない方もいるので、定期的に会社訪問して、支援者と一緒に上司に気になっていることを聞くというのも定着支援の役割だと思います。

 職場としても、障害特性についてどんなふうに配慮したらいいのか、こんな仕事を頼みたいけど、負担になりすぎないかと悩まれていることが多くあります。職場が安心して雇用を続けるためにも、私たちが間に入ることは意味があると思います。

イ:就職後の支援は職場の安心のためでもあるんですね。職場の悩みもそうですけど、働く世代は、家庭の問題も起こってきますよね。親の介護や、一人暮らしの困りごととかそういうことも起こると思うのですが、そういったことについてどう思われますか?

芳:もちろん、生きていれば仕事以外でもいろんなことが起こりますよね。そういうサポートもできる範囲でしています。介護の問題があれば、相談できる機関を一緒に探したり、一人で説明することが難しそうなら一緒に行きます。社会に出ると付き合いも増えるので、危険なことに巻き込まれないように、定期的にいろんな話を聞いておくことは大事だと思っています。

 サービスの範囲はここなので、この範囲でしかありませんとかっていうのは、ちょっと違うなって思いますね。できないこと、範疇をこれることは他の機関を紹介するという方法を取りますが、自分でやってくださいと丸投げはあまりしないようにしています。

 就職して何年も経って連絡もあまりとらなくなっても、年に一回ぐらいはお便りを出して様子を聞いたりもしてますね。状況が変わって助けが必要なら、いつでも相談できる場所でありたいですね。

 今回は、アスペルガーさんの働く準備と必要なサポートについてお話しを伺いました。体験を通して、自己理解を深めることが有効であるとのことでした。また、支援者と共にやってみること、練習することが大事な準備であると思いました。就職後も、仕事面、生活面のサポートがあることで、安心して働きづるけることができると感じました。

芳賀さん、お時間いただきましてありがとうございました。

丸

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