COLUMN
#知識

不眠症と思い込み               

   森ノ宮医療大学総合リハビリテーション学部 小川泰弘

寝苦しい時期がつづきますね

まだまだ暑く寝苦しい時期が続きますね。夏の疲れの蓄積と相まって、このコラムを読んでくださっているみなさまの中にも、朝の目覚めがなんだかスッキリしないという方もいらっしゃるのではないでしょうか。私たちが元気に生き生きとした生活を送るために、睡眠はとても大切ですね。今回は「睡眠」というテーマでお話をしたいと思います。

不眠症とは?

私は、精神科で仕事をしている関係上「眠れない」と話される方と多く出会います。詳しく話を聞いてみると、「夜寝つきが悪い」、「眠りにつくことはできるのだけど、途中で起きてしまう」、「もっと寝たいのに朝早く目が覚めてしまう」、「眠りが浅く十分眠った感じがしない」など睡眠に関する悩みは様々です。それらの症状は、医学的に「入眠障害」、「中途覚醒」、「早朝覚醒」、「熟眠障害」と呼ばれています。不眠症とは、それらの症状が続き、日中の眠気や疲労感などの心身の不調が起こる状態を指すことが一般的です。

不眠症は思い込み?

先ほどの不眠症の症状を思い出してみて下さい。何か気付くことはありませんか?そうです。どの症状も、本人がそれを深刻に考えてとても困っているということです。睡眠が大切だということは疑いようのないことですが、“しっかり眠ることが人間にとって大切だと思いすぎて逆に不安になっている”、不眠症をそんな状態としても捉えることができないでしょうか。逆にいうと、“本当は眠れていないのに本人はいたって心配していない”、そんな方もいらっしゃるかもしれません。

不眠症に関するユニークな研究

ここでEdingerさんたちによって行われた面白い研究を紹介します。この研究では、DSMという標準的な診断基準を用いて不眠症(不眠障害)と診断されたグループと不眠症の診断のない健康なグループに対し、睡眠ポリグラフ検査という睡眠の客観的な検査を行い、グループを比較しました。その結果、DSMで不眠症と診断されたグループの約39%は、睡眠ポリグラフ検査での客観的な睡眠の問題は見つからず、またDSMでは不眠症と診断されていない(本人の自覚や訴えがない)グループの43%は、その客観的な指標では睡眠の問題が見つかりました。つまり、DSMをもとに不眠症の診断をうけたグループの中には、客観的には睡眠の問題はないとされる方々も比較的多く存在し、その逆もしかりということです。

不眠症と思い込み

ある程度眠れているのに満足できない人、眠れていないのにそれを深刻だと思っていない人、なぜこのような睡眠についての主観と客観の乖離が起こるのでしょうか。その要因のひとつには「睡眠に関する思い込み」があるのかもしれません。最近では不眠を訴える方々が、睡眠に対してどのような認知的傾向(思い込み)を示しているかということに関心が集まっていて、それらは「睡眠に対する不適応認知」と呼ばれています。ここではその一部を紹介します。みなさんに当てはまるものはありますか。8時間にこだわりすぎてしまうとそれが今度は不安に変わってしまうことはなんだか想像できますね。睡眠時間は年齢を重ねることで少しずつ短くなるものですし、季節によっても変わります(夏は短い)。不眠症はお薬を用いることが一般的かもしれませんが、最近ではこの「睡眠に対する不適応認知」に焦点をあてたお薬を使わない治療法も開発されています。そこでは、自分の睡眠について振り返り、その思い込みや不安とうまく付き合えることを目指しています。まずは、自分が睡眠についてどのように思っているか、それは心配しすぎではないか、振り返ってみると良いかもしれません。

丸

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