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「怒り」と上手に付き合う方法~対人関係療法から考える~

日常生活の中で小さなことにイライラしたり、腹が立って思わず声を荒げてしまったりすることはありませんか?

「本当はそんなことしたくないのに…」

怒ってしまった後で、後悔の念に駆られてしまうこともあるでしょう。

今回は、そんな「怒り」を対人関係療法という心理療法から理解し、上手に付き合う方法についてお話ししていきます。

〈 目次 〉

1. 怒りとはなにか

2. 怒り=「役割期待のズレ」

3.怒りとの付き合い方・対処法

4.まとめ

1.怒りとはなにか

怒りは、世界共通の7感情にも含まれる基本的な感情の一つです。感情は私たちにとって自己防衛のために備わっているたいせつなシステムです。ネガティブな感情は出来れば感じたくないものですね。しかし、表のようにネガティブな感情も感じることで、自分自身を守り、生活を維持することができているのです。

不安や悲しみ、怒りを抑え込むことは問題解決につながらず、かえってダメージを受けてしまう可能性もあるのです。

2.怒り=「役割期待のズレ 」

対人関係のストレスは、自分が相手に対して持つ/相手が自分に対して持つ「役割期待のズレ」が関係しています。私たちは他者に対して何らかの「役割期待」を持っています。また、他者も私たちに対して「役割期待」を持っています。この「役割期待」とは、「母親」「上司」「知らない人」など相手に役割をあてはめ、それに沿った行動を期待することです。例えば「母親」なら「言わなくても朝起こしてくれる」、「上司」なら「職場のことをすべて把握している」などです。この期待が裏切られる(期待する行動や態度が得られない)と、怒りを感じるのです。

そのため怒りを感じた時には、役割期待について検討してみるといいでしょう。検討するポイントはチェックポイントをご覧ください。

<チェックポイント>

1.自分は相手に何を期待しているのか

2.それは相手にとって現実的で、妥当なものか

3.自分の期待は相手に伝わっているか

4.相手は自分に何を期待しているか

5.相手が本当にそれを期待していると、確認したか

6.相手からの期待八自分にとって問題なく受け入れられるものか

◎役割期待のズレから生まれる怒りの例を見てみましょう。

例 「夫が早く仕事から帰ってきても、家事を何も手伝ってくれなくてイライラする。」

この場合、妻は夫に対して「早く帰ってきた日ぐらいは、家事を手伝ってほしい」と役割期待を持っています。しかし夫は「勝手に家事に手を出したら相手が嫌がるかも」と理解しているとしたら、夫はあえて家事をしないのかもしれません。妻が期待していることを言葉で伝えなければ夫は家事を手伝わないままでしょう。この“伝える”という行動はとても大事です。「察して欲しい」、「見ればわかる」、「普通はこうだ」という考えは捨てて、相手に伝えていないことを相手が理解することはないと考えることで役割期待のズレを減らすことができるでしょう。

例 友達から会うたびに悩み相談をされるので、「私を何だと思ってるの?」と腹が立つ。

この例では友人が自分に対して持っている役割期待を理解するといいかもしれません。友人はあなたのことを「話を聞いてくれる優しい友達」「相談に乗ってほしい」と思っているなら、相談してくるのは自然なことです。また、「とにかく何か話して沈黙を埋めなければ」という風に、自分の役割期待を「話をすることである」と誤解していれば、本当は相談したくないけど他に話すことがなくて相談しているのかもしれません。「たまにならいいけど、いつも悩みを聞きたくない」「私の話も聞いてほしい」「一緒に楽しく雑談したい」など 、あなたが友人に対して持っている役割期待を伝えてみるといいでしょう。

 これ以外にも役割期待のずれによって、職場やお店でも怒りを感じることはあるでしょう。

「報告の遅い後輩にイライラする」→役割期待「社会人なら報連相はこまめにして当然だ」
●「店員の態度が鼻につく」→役割期待「お金を払っているんだから丁寧に対応してほしい」

自分が何を期待しているかを理解し、それが相手にとって妥当なものであるか、相手に伝わっているかを検討し、言葉で伝えることで怒りに対応していきましょう。また、マナー違反ではあるが、相手から直接的に被害がない(例:電車で電話している人がいる)場合は、放っておけるようになることも大切です。自分にとって長く関係性を続ける必要がある人や、大切な人とは期待のズレを無くすように働きかけることで関係が改善しますが、あまり関わりのない人とは役割期待のズレを一致させる必要はあまりありませんよね。

3.怒りとの付き合い方・対処法

役割期待のズレを解消するためには、期待を検証すること、伝えることが重要です。伝える際のポイントは以下の通りです。

役割期待を伝える際に、態度で示したり、遠回しな言い方をしたりすることは多くあると思います。

例 ・道をふさいでいる人の後ろに立って圧をかける
  ・掃除機をかけてほしいから相手の近くに掃除機を置く
  ・掃除をしてほしいと思って「部屋が汚くても平気なのね」と言う
  ・水が欲しいから「のどが渇いたな~」と言う 

相手が気付くだろう分かるだろうと思っての行動ですが、相手に伝わらなかったとき怒りはさらに大きくなります。

また、自分は相手の役割期待を理解できていると、分かった気になっていると、ズレが大きくなってしまうこともあります。「上司は忙しいから、出来るだけ自分で考えて業務を進めてほしいと思っている。」と役割期待を誤解していると「なぜ相談に来ないのか?報連相が出来ていない」と怒られるかもしれません。

言葉ではっきりと自分の期待を 伝えることで、役割期待のズレを防ぐことができます。また、言いづらいことを言う際には、クッション言葉や自分の状況を説明するなど相手にとって理解しやすくなる工夫をするといいでしょう。

例 「部屋が汚くても平気なのね」
→「ほこりが気になっているんだけど、掃除機をかけてくれない?私は洗濯物干さないといけなくて…」 

それでも役割期待を理解してもらえない、関係性が上手くいかない時は、役割期待を変えてしまう必要があるかもしれません。相手が受け入れられない期待を押し付ける、強要することは、関係性を悪化させてしまうかもしれません。期待を受け入れるかどうかは相手が決めることなので、相手の気持ちを尊重する必要があるのです。例えば、相手の都合を無視して「明日買い出しに行くから、空けといてね」と期待を押し付けると、相手はムカッとするでしょう。「明日買い出しに行きたいんだけど、一緒に来てくれる?」と伝えると良いでしょう。「〇○しなさい」と要求するのではなく提案することで相手の考えや意見を尊重することができます。これは逆の場合も同様で、相手から「〇○しなさい」と言われても聞き入れる必要はありません。自分が納得いく範囲で受けれればOKで、勝手な押し付けは「そうなんですね」と受け流していればいいのです。自分の期待を伝えても、聞き入れてもらえない場合もあることを理解し、相手に合わせて柔軟に期待を変える必要があることも覚えておきましょう。

4.まとめ

今回は怒りと上手く付き合う方法について対人関係療法の観点からお話しました。

怒りと上手く付き合うためには、自分が相手に対して持っている「役割期待」を理解することが大切です。また、相手が自分に対して持っている「役割期待」を知ることで、相手の気持ちを理解することができるかもしれません。

怒りを理解するステップ
①自分・相手がどんな役割期待を持っているか理解する
その期待は妥当であるか検討する(求めすぎ、求められすぎていませんか?)
その期待を相手は理解しているか確認する(伝わっていない場合は伝える)

自分の期待を上手く伝えて、役割期待のズレを解消することで、イライラから解放されましょう。また、自分にとって影響はないけどイライラするとき、応えなくても良い期待に対しては「ふーん、そうなんだ」と受け流すことができると、もっと楽になるでしょう。

ぜひ試してみて下さい。

参考文献 水島広子 「怒り」がスーッと消える本 2011年 大和出版

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